新しいCSSの設計規約、AMCSSに関する個人的なまとめ

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CSSの設計規約というと、BEMが有名ですが、最近またAMCSSという新しいCSSの設計規約が出てきました。この記事では、このAMCSSについて簡単に紹介したいと思います。

個人的なBEMの好きでない所

仕事でBEMをよく使っていて、優れた設計規約だとは思いつつも、使っていて気になる点がいくつかあります。BlockとElementとModifilerという3つの概念をクラス属性だけで表現しようとするため、非常に記法が見難いのと冗長なところです。

例えば、fooブロックのbarエレメントのhogeモディファイヤーを表現すると、以下のようになります。

<div class="foo foo--hoge">
    <div class="foo__bar foo--hoge__bar">
        ...
    </div>
</div>

"__"や"--"という文字を区切りに使っているため、非常に冗長に見えます。また、初めてこの記法を見た人からはたいてい気持ち悪いと言われてしまいます。

AMCSSは属性を使ってCSSを設計する

BEMやその他の多くのCSSの設計規約が、class属性を使ってスタイルを記述する方式を採用していますが、AMCSSではHTMLの属性(Attribute)を使ってCSSを設計します。AMCSSのAMとはAttribute Moduleの略です。

例えば、BEMでボタンを表現しようとするときたいてい以下の様な形になります。

<button class="button">Button</button>
<button class="button button--small">Small Button</button>

AMCSSの場合は、以下のようになります。

<button am-Button>Button</button>
<button am-Button="small">Button</button>

スタイルの記述も、クラスのセレクタではなく属性セレクタを使って記述します。

[am-Button] {
    color: #999;
    border: 1px soild #ccc;
}
[am-Button~="small"] {
    font-size: 14px;
}

概要を説明したところで、早速AMCSSの概念を説明してきます。

AMCSSの3つの概念

AMCSSには、BEMに似た以下の3つの概念があります。

  • Module
  • Variation
  • Trait

上の3つの概念に従って開発者はCSSの記述を設計していくことになります。上から一つ一つ説明してきます。

Module

BEMにおけるBlockのような概念です。am-プレフィクスにアッパーキャメルでモジュール名を記述します。

<div am-Module> 
    ...
</div>

モジュールを記述した要素の子にスタイルを記述したい場合には、"-"ハイフンで区切って子モジュールを宣言します。この子モジュール名もアッパーキャメルで記述します。

<div am-MyModule>
    <div am-MyModule-Inner>
        ...
    </div>
</div>

スタイルは、前述したように属性セレクタを使って記述します。

[am-MyModule] {
    ...
}

[am-MyModule-Inner] {
    ...
}

Variation

Variationは、BEMのModifierに似た概念ですが、Moduleで宣言した属性の値として記述します。Moduleで宣言したスタイルを、上書きしたり拡張したりするために利用します。例えば、ボタンモジュールを少し拡張して、小さなボタンを作りたいときには、以下のようにsmallを属性値に指定してモジュールのバリエーションを作成できます。

<div am-MyButton="small">
    ...
</div>

スタイルは、属性セレクタと~=演算子を使って記述します。

[am-MyButton] {
    /* MyButtonモジュールのスタイルを記述 */
}
[am-MyButton~="small"] {
    /* MyButtonモジュールのsmallバリエーションのスタイルを記述 */
}

バリエーションは、クラス属性の値と同様にスペース区切りで複数指定することも出来ます。

<div am-MyButton="small red">Button></div>
[am-MyButton~="small"] {
    ...
}
[am-MyButton~="red"] {
    ...
}

Trait

Traitは、ある特定のスタイルに関するプリセットを提供します。

前述したModuleとは直交する概念であるため、単独で使うことも出来ますし、Moduleと組み合わせて使うことも出来ます。

Moduleと同様に属性を利用しますが、Trait名は小文字から始めてローワーキャメルで書きます。また、かならず属性と値の一対で宣言します。

<h1 am-typography="header">Title</h1>

<button am-MyButton am-shape="rounded">Button</button>
[am-typography~="header"] {
    font-size: 30px;
    font-weight: 600;
}

[am-share~="rounded"] {
    border-radius: 8px;
}

プレフィクス

AMCSSの文書では、説明のために属性名の最初に、"am-"というプレフィクスがついています。それに習ってこの記事でも属性のプレフィクスには"am-"を使っていますが、規約ではこの"am-"というプレフィクスは、短いものであればなにを使ってもかまいません。ValidなHTML属性を使いたい場合には、"data-"プレフィクスを使うことも可能です。

勿論、am-じゃなくてui-とかでも良いことになります。

[ui-MyButton] {
    ...
}

気になる速度について

たまに、属性セレクタはクラスセレクタよりも遅いので使うべきではない、という話を聞くことが有ります。

確かに属性セレクタはクラスセレクタよりも数割遅いのですが、実際にウェブサイトを作っていて問題になることはほとんど無いでしょう。というのも、CSS自体がボトルネックになることはあまり無く、重たいネットワークや容量の最適化されていない画像、リソースなどのその他の処理の方が先にボトルネックになることはほとんどだからです。

また、CSSがボトルネックになる場合であっても、属性セレクタがボトルネックになるよりも前に、まず利用していないスタイルが多すぎることや、子孫セレクタの利用の方が先に問題になるでしょう。

どうしても速度が気になる場合には、通常のウェブサイトをAMCSS方式に変換してくれるAM Benchmarksというツールがあるので、それを使ってプロファイルを取ってみると良いでしょう。

終わりに

CSSを記述する際に、どういった設計規約を取るかによってCSSのメンテナンス性や拡張性は大きく変わります。この記事では、AMCSSという属性を使ってスタイルを記述するCSSの設計規約を紹介しました。