ウェブパフォーマンスの最適化のためにできる事は何か、もしくは『Webフロントエンド ハイパフォーマンス チューニング』という本を書いたという話
- 作者: 久保田光則
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2017/05/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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技術評論社さんから『Webフロントエンド ハイパフォーマンス チューニング』を出版することになりました。題名通り、フロントエンド周りのウェブパフォーマンスについて書いた本です。
ウェブパフォーマンスというのは、昔はウェブページの初回の表示の速さのみを指すものでした。インタラクションを持たない静的なウェブページがほとんどであった頃には、一度ウェブページを表示し終わってからはパフォーマンス上の問題が発生することが比較的少なかったからです。ウェブパフォーマンスを改善するチューニングテクニックというのもこの初期のリソースの読み込みを改善するものが主でした。このようなテクニックは、『ハイパフォーマンスWebサイト』で語られている「ファイルをgzip圧縮して配信する」「DNSルックアップを減らす」「JavaScriptとCSSは外部ファイル化する」などが代表的なものです。
この状況は、複雑な振る舞いを持つウェブアプリケーションが登場する事で変わります。JavaScriptによる動的な振る舞いを持つウェブページでは、一度レンダリングが終わってからもユーザのアクションに応じてインタラクションを行う必要があります。その時に問題になるパフォーマンス上の問題とは、従来のリソースの読み込みに関する問題ではなく、JavaScriptやDOM操作の実行速度の問題であったり、CSSセレクタのマッチング速度の問題であったり、視覚的要素のレイアウトや描画の速度の問題であったりします。これらの新しく出てきたパフォーマンス上の問題は、これまで紹介されてきたリソースの読み込みの速度をチューニングするテクニックでは全く対応できません。例えば、アニメーションの描画をなめらかにするために初期表示のパフォーマンスの最適化を行っても意味が無いことは直感的にわかると思います。
こういった新しく登場したパフォーマンス上の問題を解決するには、ウェブパフォーマンスという言葉の意味を捉え直し、かつそれらの問題が起きる根本的な原理であるブラウザのレンダリングの仕組みを把握し、レンダリングの工程ごとに発生する異なる問題を解決するためのチューニングテクニックを正しく適用することが必要です。この本では、ウェブパフォーマンス上の解決すべき問題をGoogleが提唱しているパフォーマンスモデルであるRAILに添って説明しています。その上でブラウザのレンダリングの仕組みやウェブパフォーマンスの計測方法や様々なチューニングテクニックを紹介しています。この本では今現在のウェブパフォーマンスを扱う上で必要になる基礎知識やチューニングテクニックを体系的に解説しており、ここまでウェブパフォーマンスについて網羅した技術書は、日本語の書籍の中では現時点ではこの本だけです。
すでに書店などには並んでいるのでウェブパフォーマンスに関心のある方は一度手に取って読んでみて下さい。というわけで『Webフロントエンド ハイパフォーマンス チューニング』の宣伝エントリでした。